転職漂流記〜株式会社にゃんにゃん通信編〜前編

今の時代では考えられない理由で前職をリストラされたお母さん。

デザインの仕事をまた探し始めましたが、世の中バブル崩壊の真っ只中。

ついこの間まで学歴不問が多かった求人も、大卒以上が応募の条件が

ほとんどになりました。

しつこいようですが、お母さんは学歴も資格も何も持っていません。

同じ頃、離婚の話もあって別居中だったので、お母さんは何としても仕事を

探さなくてはならない状況でした。

大好きなデザインの仕事はなかなか見つかりませんでした。

そんな時、お母さんの友達が派遣会社に登録し、仕事を紹介してもらったという

話を聞きました。今の時代よりもずっと派遣社員という雇用形態は珍しい事でした。

お母さんは藁にでもすがる思いで、株式会社にゃんにゃん通信に登録しました。

株式会社にゃんにゃん通信は日本で最大級の通信会社のグループ会社です。

派遣先は母体の通信会社のコールセンターが主でした。

お母さんは登録してすぐ、母体のコールセンターで働く事になりました。

母体のにゃんコールセンターは、主に電話回線の新設、廃止、変更などを一般の

電話回線を使うお客さんからの問い合わせを受けたり、手続きをしたりする窓口です。

専門の社内システムを使って、電話工事の手配もします。

デザインのデの字もないまったく畑が違う職種です。通信の仕組みが難しいと言って

研修の座学の時点で挫折する人も沢山いました。

でも、お母さんにとってはデザインのように自分自身から何か生み出さなくても良い

ので簡単に感じました。

ただ覚えればいいだけなのかとお母さんは思い、こんなに簡単な仕事でお金を貰える

なんてなかなかいいな、と思いました。

お母さんはデビューテストも高得点でとても褒められ、デビュー後もお客さんに

完璧に受け答え出来、何か注意を受けてもすぐに正す事が出来、注目のエースになりました。

そのまま2年が過ぎ、お母さんは派遣社員ながらも新人研修のお手伝いをお願いされる

までに上達しました。お母さんはデザインの仕事は出来ないけれどそれなりに充実した

毎日を送っていました。

そんな時、マイラインというサービスが世の中で始まりました。

この頃からいろんな通信会社が出来ており、通信の世界では独占していたにゃんにゃん通信

も競争社会に飲み込まれて行きました。

他社との競争に負けない為、お母さんも新人研修担当から外され、また電話オペレーター

に戻されました。以前と違ってノルマも与えられるようになり、成績優秀者は表彰され、

チームごとの目標も課せられて足の引っ張り合いになっていきました。

通信の知識が豊富よりも、いかに勧めるサービスを売ることが出来るかが重要視されて

いきました。どんなに丁寧に親切にお客様対応をしても、サービスが売れなければ面談を

しょっちゅうされてお説教を受けなければならなくなりました。

付いていけない人はクビになるか自主的に辞めて行きました。

お母さんは仕事が楽しくなくなりました。

でも、意外とお母さんは成績が良くていつも表彰されていました。

そんな中、仲良くしていた事務のおばちゃんがリストラされ、仲良しのオペレーター

仲間のくるみちゃんも結婚を理由に辞めて行きました。

お母さんは独りぼっちになり、周りは競争相手しかいなくなりました。

そんな時、コールセンターの統合で地元では働けなくなり、電車通勤をしなくては

ならなくなりました。そして、タイミング悪く離婚の話も固まりました。。。

株式会社にゃんにゃん通信後編に続く…