テレの日記

ボクの日記です。お母さんの記録もしています。

転職漂流記〜株式会社にゃんにゃんリフォーム編〜

やった!

正社員になった!

 

ええっと、仕事は面接の説明では事業拡大による人員増員した、リフォームに対する、

お客様対応のコールセンターね。

 

お母さんは「正社員♪正社員♪」と小躍りで初日出勤しました。

このリフォーム会社は社長夫婦で経営する、いわゆるワンマン営業というか

社長=神、という感じでした。奥さんが社長、旦那さんはオーナーでした。

 

「ここがあなたが受け持つコールセンターです。」

…と社長に言われて、自分が働くコールセンターのドアを開けると。。。

 

そこには、20人くらいのパートのオバちゃん(なんと平均年齢55!!)が

受話器片手に電話をかけまくっていました。

会議室で使うような長机に電話機が置いてあり、オバちゃん達は紙とペンで

何やら決まったトークスクリプトで喋っていました。

 

パソコンなし。電話機は昔の家庭用電話機。

どうやらリフォームの勧誘を行なっているようです。

勧誘が成功してアポが取れると、嬉しそうに小走りにオバちゃんが前に出て来て、

銀色のベルをチーン!!と鳴らしました。

※昔のレストランとかに置いてある、映画とかで見るボーイとかを呼ぶ時のベル

 

ベルの音を聞いた他のオバちゃん達は顔を上げ、焦ったように自分もアポを

取ろうと殺気立っていました。どうやら、アポを取るとベルを鳴らすようです。

 

「…」

 

お母さんはあまりに昭和な、レトロなこの光景に言葉が出ませんでした。

あれ?確か今って21世紀…のはず。。それに、なんか聞いてた仕事とちがう。。

 

お母さんは社長を見て、

「あの、コールセンターのマネージャーって…これ、ですか?」

と恐る恐る聞きました。

 

社長は、「そうです!みなさん、いい方ですよ!上は75歳の方までいます!」

 

75…!!

 

「アポが取れたら、工事の部署がお客様の所に行ってリフォームします。

そうすると、オペレータさん達にインセンティブが入ります。それをあなたが

管理するのです」

 

社長はそう言って、ノートをお母さんに渡しました。

中をめくると、何月何日に誰々がアポを何件取って、何件施工した、という

記録が書かれています。

 

「それに毎日記録して下さいね」と社長は言いました。

 

うわっ記録の方法まで昭和!

手書き!?手書きで記録すんの!?

 

「あのー…パソコンとかで記録しないんですか?」とお母さんが尋ねると、

「うちにはパソコンは経理部にしかありません。大事な情報の流出を防ぐ為です」

と社長は言いました。

 

…逆でしょ、フツー。。ノートって、簡単に持ち出せるがな。。

しかも経理部って、総務兼経理兼庶務兼のオバちゃんが一人いるだけじゃん。。

 

あっけに取られていると、今度はちょい綺麗なオバちゃんを連れてきて、

「そうそう。あなたと一緒にマネージャーをする方を紹介しますね。ウチではもう

6年くらい働いてくれてます。彼女ね、実は女優さんなんですよ!」と社長は言いました。

 

「は?女優??」とお母さんが目を丸くしてると、その女優のオバちゃんは

ニコッと明らかに本心ではない笑顔で、「よろしくお願いしますね!私、夫と共に

俳優業でして、まぁまぁの二流女優ですの。時々ロケの関係でお休みしますけど、

お互い切磋琢磨して頑張りましょう!」と言いました。

 

…二流女優…まぁまぁの…?

謙虚なんだか自慢なんだか。。取り敢えず、見た事ないし、聞いた事ない名前だけど、

まぁいいか…お母さんがそう思っていると自称女優のオバちゃんは、

 

「私、ここでは元々オペレーターでしたの。でもまぁちょっと成績が良くて、

女優ならではの演技力って言うのかしらね、なんかアポ取れちゃうのよね。

それでまぁ社長からみんなのリーダーにならないって言われて、まぁそこまで

仰るならって引き受けて、マネージャーになってまだ3ヶ月ですの。でも私がマネージャー

になったらみなさんのアポがね、取れるようになったのよ。なんて言うのかしらね、

やっぱりアポ取るのも女優になりきる?って言うの?ほら、みなさんお歳は召していても

女じゃない?女優になった女はなんか生き生きするのよ。だから私、生意気ながら

みなさんに演技指導を行いましたの。そしたらみなさん、アポ取る取る!!

私のアポを取る時の録音をみなさんにお聞かせしたらね、まーみなさんまるで玉音放送

を聴くかのようにじっと目をつむって聴いてくださってね、なんだか恥ずかしいやら

嬉しいやら。ウチの夫もね、俳優なんだけど、やっぱり私みたいに副業してるんだけどね、

副業の中古車販売の成績が良くて良くて、あらやだ俳優業より稼いじゃって、もーお店の

オーナーから正社員にならないかって誘われちゃって、でもほら、本職俳優でしょ?

ロケとかね、やっぱそういう時に休まなくちゃいけないから仕方なくお断りしてね、

なんかもーオーナーがそこを何とかとか言って夫を説得するする、それで…」

 

…とまだまだ続く話を延々にし始めて、お母さんはコイツとこれから毎日

顔合わせて働くのかと思うと、初日で疲れてしまいました。

 

数日後、今度は会議室から怒鳴り声が聞こえてきました。

聞き耳を立てると、どうやらオーナーと営業さんが揉めてるようです。

 

営業さんは、なんだこのインチキ会社はクソが!!みたいな事を言い、

オーナーは、じゃあお前は今すぐクビだ!明日から路頭に迷うがいい!!と

言い返し、営業さんはふざけんな訴えるからな!と捨て台詞を吐いてゴミ箱を

蹴っ飛ばして出て行きました。

 

「…」

 

お母さんはただポカーンとするばかりでした。

 

そんなこんなで、営業さんの何人も「ふざけんな訴えるからな!」的な捨て台詞を

吐いて辞め、オペレーターさんの中でも賢い人は私に申し訳なさそうに謝って、

マネージャーごめんなさい、私ちょっとついて行けなくて。。。と言って辞めてきました。

 

そういえば、お母さんの仕事は。。。

毎日あのノートに記録を書いて、オペレーターに「もっとアポ取ってね」と声をかけ、

自称女優のよく分からない自慢話を聞いて、9時から夕方4時まで会社にいて

(アポ取りのオバちゃん達は夕方3時までの勤務なのでみんなが帰ったらマネージャー

も帰って良いルール)、残業なしで帰るという死ぬほど何の為にもならない仕事内容でした。

 

この時点でお母さん、34歳。

このままここにいたら、ボケると思いました。

この調子じゃぁ、一体この会社いつまで持つやら…

 

しかもボーナスは出すと言いながら、会社の実績がどうとか利益がなんとかと

理由を付けて出さない会社でした。

 

頑張って勤めて1年。

 

お母さんは再び転職活動を始めました。。。。

 

職漂流記 株式会社もしもしにゃんにゃん に続く〜

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